1.「おいしそう!」と思われない料理名表記


当然ですが、英語メニュー内の料理名表記に多いのが、料理の具と調理法の説明です。たとえば:

  • Udon noodles with fried shrimp in soup
  • Cooked rice with bamboo shoots
  • Green onion fatty tuna rice bowl

さて、上記は全て日本でおなじみの料理ですが、英語表記を見てなんの料理かパッとイメージできますか? 

答えは:

  • 天ぷらうどん
  • たけのこご飯
  • ネギトロ丼

正直なところ、パッとイメージはできず、数秒かかって
「もしかして・・・天ぷらうどんのことかな?」
「ああ、言われてみれば」
というリアクションだったのではないでしょうか?

このような料理の説明文を料理名として表記しても、日本人の私たちですらどんな料理かすぐにイメージできないのですから、外国人にはなおさら、おいしさが伝わらないですよね。
特に日本料理は、英語圏の国々ではほとんど食されない植物や魚が食材として使われるため、それらの食材の名前を挙げられたとしても、「注文してみたい」という気持ちにはつながりにくくなります。

結局のところ、ステーキやサラダなどのオーソドックスな、なじみのある料理名を含むものが注文されていきます。
そして結局のところ、外国人のお客さんにスタッフが「おすすめは?」と聞かれます。

もし経営するお店のイチオシ料理がステーキやハンバーグではなかったとしたら、外国人観光客がそれを食べずに去っていくのは寂しいですよね。

2. 「おいしそう!」と思われる料理名表記の仕方


料理の説明文からおいしさが伝わらないとしたら、どのように表記したらいいのでしょう?
まずは以下のメニュー画像をご覧ください。

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どれも、料理名はなるべくシンプルで短い数単語の組み合わせで大きく表記し、料理の説明文は文字を小さくして添えています。
つまり料理名で料理の全てを語ろうとするのではなく、食欲をそそる一番大事な要素だけを前面に出すことが大事なのです

親子丼にいたっては、スタンダードな日本料理名なので、そのままローマ字表記にして、別記の説明文で具材などの詳細を伝えています。
その方が外国人観光客にとって、
「日本で親子丼を食べたけど、すごく美味しかった。また親子丼を食べたいな」
と覚えやすくなります。


2-1. 思わず注文したくなる英語メニュー表記3つの法則

国内外様々なレストランのメニューを見ていると、
「メニューを通して料理を覚えてもらおう」
「おいしさを伝えよう」
という姿勢のレストランは、以下の3つの法則に則って料理名を決めているように思えます。

  1. 料理名は3文字~5文字程度にする
  2. Crispy(カリカリ)、fresh(新鮮な)、local(地元の)など、食欲に訴えかける、もしくは料理の付加価値を表現する単語をなるべく織り交ぜる
  3. 短く、覚えやすいように表現できない料理は、現地語の固有名称を使い、別記の説明文で補足する


2-2. 食欲をそそるワード一覧

京都に旅行に行ったとして、もしも料亭で以下の料理名が目に入ったら、どちらを頼みたいと思いますか?

A. 野菜の盛り合わせ
B. 京野菜の盛り合わせ

考えるまでもなくBですよね。では以下はどうでしょう?

A. エビ天
B. さくさく衣のエビ天

思わずBですよね。
日本において多くみられるこれらのようなネーミングの工夫は、英語でももちろんできます。

英語圏の人々に響く食欲をそそるワードというものは存在します。
以下の一覧を見て、各ワードがもたらすイメージをつかみましょう。

Word ワード イメージ
Crispy サクサク/カリカリ 噛むとサクッ・カリッと軽い音がするような触感を表します。
Crunchy ザクザク/パリパリ 噛むとザクッ・バリッと重めの音がするような触感を表します。
Tender やわらか 肉の柔らかさを表現するのに使われます。高級感を連想させます。
Juicy ジューシー 日本語でもよく使われるこの表現は、英語でも同じイメージを伝えます。
Crumbly ほろほろ タルトの生地やそぼろの肉などの触感の表現に使います。
Creamy クリーミー 日本語で使われる意味と全く同じです。
Sugary (砂糖が含まれて)甘い 外国人が馴染みのない日本のデザートがちゃんと甘いということをアピールするのに使うといいでしょう。
Filling たっぷり/大盛り 満足感が得られるような量や見た目を表します。たとえばイクラがたっぷりつまったイクラ丼など。
Rich こってり/濃厚/ぜいたく 主にコクのあるスープや濃厚なソースなど、個体に近い液体を表す時に使います。
Delicate 繊細 きめ細かい調理法で作っています、というイメージを表します。
Tasty うまい/うまみたっぷり 率直に「うまい」と表記するのも、アリです。
Fresh 新鮮/とれたて 生野菜や生魚料理の名前に使います。
Melted トロトロ チーズやチョコレートなどをあえて溶かす料理に使います。
Seared あぶり 表面に焼き色がついた食材を表す時に使います。
Simmered ことこと煮込まれた 弱火で長時間煮込まれたイメージになります。
Soft-boiled 半熟 トロトロの半熟状態であることを表すのに使います。
Local 地元の/地元でとれた 観光客は地元産の食べ物を目当てに来る人も多いので、しっかりアピールしましょう。
Classic 昔ながらの/元祖 本物を食べたい!と思わせる表現です。
Authentic 本場の 日本に来る外国人観光客にとって「本場の日本食」はなににも代えがたい価値です。

2-3. 魅力的な英語の料理名作り

上記のワードと料理や食材名を組み合わせて、魅力的で、かつ短くて覚えやすい料理名を考えてみましょう。
以下の手順を踏んでみてください。

1. 原則として、「食欲をそそるワード」とその他の形容詞は一番前、名詞である料理・食品名は最後にします。

2. 使われている食材を全て挙げようとすると長くなり説明文になってしまうので、料理の本質・本当に味わってほしいものがなにかを考え、飾りとなる食材や調理法は名前から削ぎ落としましょう。

以下に、実在する料理を英語にした例をいくつか挙げるので、参考にしてみてください。


◆Delicate rare beef cutlet
牛かつ(ミディアムレアに焼かれた和牛を揚げた料理)


◆Classic Hakata hot pot
水炊き


◆Melted cheese fries
フライドポテトチーズのせ


◆Sweet & tender simmered pork
豚の角煮・半熟玉子のせ


◆Crispy camembert tempura
カマンベールのてんぷら


◆Juicy fried tofu
揚げ出し豆腐


◆Tossed fresh tuna & avocado
マグロとアボカドのわさびマヨネーズ和え


◆Local creamy sea urchin
生うに


2-4. 料理の詳細を補足する説明文

いい料理名ができたら、今度はそれだけでは伝えきれない要素を説明文で補足します。
以下の基本形に調理法や食材名を当てはめていくといいでしょう。

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この形をもとに、先ほど挙げた魅力的な料理名の例に説明文をつけたしていくので、参考にしてみてください。


◆Delicate rare beef cutlet
Medium rare Japanese beef cutlet, served with chopped lettuce and pickles


◆Classic Hakata hot pot
Vegetables, mushroom and chicken boiled in broth, served with ponzu sauce


◆Melted cheese fries
French fries with bacon topped with melted American cheese


◆Sweet & tender simmered pork
Cooked pork simmered in rich sweet sauce, served with soft-boiled eggs


◆Crispy camembert tempura
Frittered camembert cheese


◆Juicy fried tofu
Deep-fried tofu dipped in dashi-based sauce


◆Tossed fresh tuna & avocado
Fresh tuna and avocado tossed with wasabi and mayonnaise


◆Local creamy sea urchin
Local sea urchin served with boiled seaweed


このように説明文には付け合わせや他の具材もしっかり明記します。
そうすることで、外国人のお客さんがスタッフに料理について、一つひとつ聞いていく必要がなくなります。

(メニューが頻繁に変わる高級レストランなどの場合、いちいち固有名称をつけない傾向があります。実際、海外の高級レストランの多くは「料理の説明文」を料理名にしています。)

3. 説明文と声かけでアレルギー対策


外国人のお客さんが、アレルギー物質を含む食品が使われていないか、自分でもある程度確認できるようにするという意味でも、説明文で具材をきちんと表記するのはいいアイディアです。
もちろん、お店側から確認もするべきなので、以下のフレーズをスタッフに覚えておいてもらいましょう。


◆Do you have any food allergies?

アレルギーはございますか?


返ってくる答えはほとんどの場合、以下の文になります。


◆I’m allergic to crustaceans.

甲殻類アレルギーです。


I’m allergic to milk とか I’m allergic to shrimpなどと食品名を言ってくれればわかりやすいのですが、「甲殻類」や「乳製品」といった食品の分類を表す単語は聞き慣れないものばかりです。

以下に主なアレルゲン類の英語を用意したので、スタッフの目につきやすい場所に一覧を貼っておくといざという時にトラブルを未然に防げますよ。

Types of allergens アレルゲンの種類 含まれる主な食品
Crustaceans 甲殻類 shrimp, lobster, crab
Shellfish 貝類(甲殻類を含むことも) oyster, clam, shrimp, lobster, crab
Dairy 乳製品 egg, milk, cheese, butter, whipped cream, yogurt
Wheat 小麦
Nuts ナッツ類 peanut, cashew nuts
Soy (bean) 大豆
Soba そば soba, (場合により) udon

外国人のお客さんのアレルギーを聞きだしたら、以下のフレーズを使って避けるべき料理をしっかり伝えましょう。


◆This includes shrimp. / These include butter.

こちらの料理はエビが使われています。 / これらの料理はバターが使われています。


もし具材を取り除けるのなら、こう伝えましょう。きっと喜んでくれるはずです。


◆We can take out the nuts for you. / We can make this without shrimp.

ナッツ類を取り除くこともできます。 / エビなしで調理できます。


もし他の食材でも調理できるのなら、こう伝えましょう。きっと喜んでくれるはずです。


◆We can make this with pork instead.

こちらは代わりに豚肉でお作りできます。


* * *

いかがでしたか?
メニューもスタッフもここまで準備をすれば、自信をもって外国人のお客さんを受け入れられます。
言語が原因の障害を取り払うことにより、お店本来のサービス提供に集中することができるはず。

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