1. 振り幅の変化


あなたはいくつの性格を持っていますか?

私は自分で認識している限りでは大きくわけて6つです。

  1. 会社や仕事関係の人の前で見せる、理論的で仕事熱心な性格
  2. 英語のレッスンを教える時や大勢の前でのスピーチの際などで見せる、正義感が強く社交的な性格
  3. 学生時代の友達に見せる、冗談好きな性格
  4. 自分の子供に対してや子供に英語を教える時だけに見せる、無邪気な性格
  5. 家族だけに見せる、物静かな性格
  6. 自分独りの時だけに表れる、閉鎖的で非社交的な性格


振り幅の大小は人によるようですが、場面や目的に応じて人の性格は変わっているかのように思えます。
(私の本当の性格は、おそらく、「面倒くさがり」だけど「人に褒められるのが好き」で「臨機応変」なのだと思います。だから人に認められなければならない公の場では良く映ろうとし、置かれた場面や目的に最適な立ち振る舞いをしようとします。逆に改めて認められる必要のない家族の前や独りの時にはがんばらないのだと思います。)


なぜこのような話をするのかと言うと、性格と外国語を話せるようになることは以下のような密接な関係があるからです。

  1. 外国語を話せるようになるまでに、自分が本当に言いたいことが何であるかを考える機会が増え、自身の本当の性格を理解していくことになるからです。
    自分の性格を理解することにより、自分らしいコミュニケーションの仕方を外国語においても体現できるようになっていきます。
  2. 話す言語は人の性格に影響を及ぼします。
    外国語を話せるようになると、人前に出す性格が変化していきます。正確に言うと、人前に出せる性格の種類が増えていく、ということです。
    これにより、自分のコミュニケーション方法の振り幅が大きくなっていきます。
    そして、時と場合によってもっとも効果的なコミュニケーション方法を選べるようになっていきます。


私は英語が話せなかったとしたら、大勢の人の前で社交的な自分を演じることはできなかっただろうと考えます。
そして日本語が話せなかったとしたら、外国人との英語での会話で柔和な態度を取ることができなかっただろうと感じます。

1-1. 性格とコミュニケーションの仕方の関係と変化

「英語ネイティブ」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?

多くの人は「ジョークを交えてよく喋る、社交的で常に笑顔の明るい人」を思い浮かべるかもしれません。
たしかに、このイメージは英語圏に住む人のひとつの理想像と言えます。
逆に日本人の理想像は「丁寧で柔和できっちりしている人」かもしれません。

言語は、その言語が使われる文化の理想が体現できるように最適化されているようなところがあります。

英語は重要なことや面白いことをズバッと言えるようにするためなのか、短くシンプルな表現が数多くあり、感情を直接的に伝えられるようにイントネーションの強弱がはっきりしています。

一方で日本語は丁寧さや柔和さを表現するためなのか、文は長く、本意を間接的に伝える表現方法が数多くあります。

つまり外国語を学ぶということは、自分の言動をその言語の文化の理想のコミュニケーションの仕方に合わせていくことにつながります。
これは特に、不特定多数(mass)に向けられた言語教育を受ける時に起こりやすくなります。

次の英文を読んでみてください。

  1. I can’t believe it!
  2. I’m your biggest fan.
  3. This is the worst day ever!


これらの表現が英語の教材に書いてあったとしましょう。
全て、英語圏では実際によく耳にする表現ですが、意訳すると以下のようになります:

  1. 信じられない!
  2. あなたの絶大なファンです。
  3. 今日は人生最悪の日だ!


さて、あなたが日本語で普通に生活している時間の中で、これらの表現は使いますか?
1番はともかく、2番、3番はそうそう言わないのではないでしょうか。

日本語では、これらの表現を使うことが自然である場面はあまりありません。
でも英語では、以下のようなシチュエーションで実際に使われます。

  1. 屋外を歩いている時に急に雨が降り出した時に: I can’t believe it! (信じられない!)
  2. テレビでよく目にする有名人とたまたまエレベーターに乗り合わせた時に: I’m your biggest fan. (あなたの絶大なファンです。)
  3. 電車が遅延して会社に遅れて上司に怒られた後に: This is the worst day ever! (今日は人生最悪の日だ!)

海外ドラマのセリフのようですよね。
もし日本人が言ったとしたらちょっとおおげさに聞こえますよね。
でも英語圏では不自然ではありません。


一方で、日本に住んでいて日本語で生活している人は、たとえば以下のような表現を使うのではないでしょうか。

  1. 屋外を歩いている時に急に雨が降り出した時に: まいったな。
  2. テレビでよく目にする有名人とたまたまエレベーターに乗り合わせた時に: いつも見てます。
  3. 電車が遅延して会社に遅れて上司に怒られた後に: 今日はついてないな。


もし英語の教材に書いてあることをそのまま真似ているだけだと、自分の普段のコミュニケーション方法とはかけ離れた表現を使うことになり、英語を話す時性格が変わったかのようになる、という現象が起こります。
英語に限らず、どのような言語を学んでも同様の変化が起きるでしょう。

語学の教材というものは学習者一人一人に向けて作ることはできないので、massに向けた教育になります。
つまり、ある一定の理想像に学習者全員を同質化させていくことになります。

1-2. 元の性格本来のコミュニケーションの仕方への立ちかえり

しかし同質化は決して悪いことというわけではありません。
外国語を学ぶということはその言語の文化の一部を学ぶということです。
だからその文化に触れて、一度は郷に従ってみるのはとても大切な最初の一歩です。

ただ、色々な表現を覚えることを最終目標にしないで、最終的に自分を表現するのに適した表現とそうでないものを選別できるまで、「こういう表現は自分に合わないな。自分らしい言葉で話すのにもっと適切な表現はないかな?」と考えながら試行錯誤することを忘れてはいけません。

ベルリッツの英語教師だった頃、座学を通してのみ英語を学んできた学習者と話すと、たいていの場合、第一印象は「固い人」でした。
もしかしたら、受験合格を目標にしたきっちりした英語をがんばってきたからかもしれません。

また、海外留学して帰ってきたばかりの学習者と話すと、たいていの場合、第一印象は「日本人にしてはちょっと軽いノリの人」でした。
おそらく、留学先でできた友達と上手くやっていくために流暢でカジュアルな英語を身につけたのでしょう。

しかし英語のレッスンを受け始めると、次第に、その人の本来の性格が表れてきます。
初めは固い印象だった人が実はユーモアあふれる気さくな人だったり、初めは軽いノリの人だったのに実はとても思慮深くて他を圧倒するような鋭い考えの持ち主だと言うことがわかったり。

試行錯誤と表現の選別を繰り返すことで、これまでは一通りの伝え方しか知らなかったために表現できなかった自分の本来の性格が、外国語においても正確に表れるようになります。
このことから、ベルリッツの教師は目の前の生徒の職種、目的や性格も考慮して、その人が使うのに適した表現を提案します。

このように、本当の意味で外国語を自分のモノにすることにより、外国語を話している時でも自分の本来の姿を表現することができます。
たとえば先ほど挙げた3つのシチュエーションでより日本人らしい表現は、例として以下になります。


  1. 屋外を歩いている時に急に雨が降り出した時に: Not now. (まいったな。)
  2. テレビでよく目にする有名人とたまたまエレベーターに乗り合わせた時に: I see you on TV all the time.(いつも見てます。)
  3. 電車が遅延して会社に遅れて上司に怒られた後に: It’s just not my day today.( 今日はついてないな。


日本のドラマのセリフっぽくなったのではないでしょうか。

このように、英語としても正しく、かつ、喋り手の性格や文化を表現する方法は必ずあります。
そこにたどり着くのが語学を自分のモノにするという意味だと、私は考えます。

英語のレッスンの予習、復習をしっかりして、そしてレッスン中も能動的に学習に取り組み、自分が言いたいことの表現方法を貪欲に追求してきた生徒は、みんな英語を自分のモノにしました。
年齢は関係ありません。
30代の方も40代の方も、60代の方だって、自分の人となりがあふれ出るような英語を話せるまでになりました。

でもこれはあくまで結果であって、英語を学んでいくプロセスの中で自分に合った勉強法や自分に合った話の展開の仕方、自分に合った表現方法が少しずつ明確になっていくのがより大きな成果です。
すると教師が指導するまでもなく、生徒はレッスンや普段の生活の中で、自分がさらに英語を身につけるのに最も効果的な行動を無意識にし始めます。
ここまで来れば、教師の立場から言うと、「この人は放っておいても上達していく」という状態になります。

学習者のことを教える側が「放っておいても上達する」と評するということは、その学習者は自立したイングリッシュスピーカーです。
自分を理解し、世界の共通語でコミュニケーションが取れ、自分を高める方法を知っていて、どんな相手にも自分を理解してもらえるのなら、自分に絶対的な自信を持たずにはいられないはずです。

つまり英語を学ぶ理由は、自分が本当に表現したいことに向き合うことで自己を理解していき、自分に合った上達の術と、言語に縛られずに自己を表現する自由と自信を得ることです。

1-3. 自己の多様性アップ

英語をはじめとした外国語を学ぶことでもうひとつ、副産物がついてきます。
外国語を話せるようになる過程で、自分が普段しないコミュニケーションの仕方をしていき、その経験からコミュニケーション方法の振り幅が増大します。

料理にたとえると、普段は繊細なあじつけの和食しか作らないけど、作ろうと思えばパンチの利いた中華が作れるようになることに似ています。
和食しか作ったことがない人が、中華の調味料を和食に使ってみようという発想をすることはないでしょう。
また、和食の調理法を中華に応用してみようという発想もしないでしょう。

外国語をモノにするということは、元々いた文化圏の中と、身につけた外国語の文化圏の中の両方で「できること」が増えるということです

英語を話せるようになれば外国人と対等にビジネスができる」などと言われますが、細かいことを言うと、実は間違いです。
相手が一ヶ国語のみ話せる外国人だとしたら、場合によっては対等程度などではなく、対等以上にビジネスができるようになるのです。

相手が日本語を話せないということは、日本のスタイルのビジネスができないということです。
しかし日本語と英語が話せる人は、日本のビジネススタイルも、英語圏のビジネススタイルもできてしまうのです。
時と場合により臨機応変に動けるのがどちらであるかは、明白ですね。

話せる言語をひとつ増やすということは、打てる手札を二倍に増やすようなものです。
実際、長年教えていたある40代の生徒は7年もの英語学習の末、以下の変化を遂げました。

  • 英語を全く喋れなくて出張や英語での会議を避けていたが、今では海外からの来訪客と東京-大阪間を新幹線で一緒に移動しても会話に困らなくなった。
  • 元々面白いことを言って周りを楽しませるのが得意だったが、英語でも外国人を笑わせることができるようになった。実際、アメリカ人やイギリス人の教師が彼とのレッスンから、笑いすぎて息も絶え絶えに出て来るところを何度も見かけるようになりました。仕事においても、外国人のビジネスパートナーとの関係構築は言うまでもなく得意です。
  • 飛行機で隣に座った外国人と意気投合し、一回のフライトで連絡先を交換するほどの仲にまでなれるようになった。
  • 英語で自分を表現することに困らなくなったので、今はフランス語も学んでいる。

 

まとめると、外国語を学んでいくと、以下の3ステップを通して自己の多様性が上がります。

  1. 英語や英語圏の文化を真似ることによって、普段の自分とは違う性格=コミュニケーション方法が身につく。
  2. それに留まらずに英語で自分本来の性格を表現できるようになることで、自分が得意とするコミュニケーション方法を英語圏でも振るうことができるようになる。
  3. 英語を学ぶ中で得たコミュニケーション方法を、日本での生活や仕事に応用することができるようになり、自分の言動の種類を多様化できる。

いざという時に自分の立ち回り方を切り替えることができれば、あらゆる場面に対応できるようになります。
冒頭にお話しした「人前に出せる性格の種類が増える」とはこのことです。

2. 自分で「なんとかする」力


さて、英語などの外国語を自分のモノにした先にはどのような世界が広がっているのでしょう?
それは、自分の意志と自分の手で、置かれた状況を良くしていくことができる世界です。

大半の人が腑に落ちない計画に、「誰かNOと言ってくれないかなー」と思ったことはありませんか?
直接的にはっきり反対意見を言う人が少ない日本語圏においては、計画はそのまま進んでしまい、後日反省会という形で上手くいかなかったという事実に、代わりに、NOを言ってもらうことがあります。
誰も傷つかないようにという配慮はありがたいものの、よくよく考えるとかなり非効率です。

一方で英語圏では、個人が自分の思い通りにならないことがあるとチームの和を乱すような発言を感情に任せて会議などの公の場でしてしまい、エスカレートして会議室を出て行ってしまい、結局ケンカ別れしてしまうというようなことがあります。
他人に無理に合わせる必要はないものの、言い方やタイミングをちょっと工夫すればせっかく構築した関係を解消しなくてもよかったかもしれません。
空気を読んで態度や発言を調整することが不得意だと苦労することもありますよね。

どの文化にも、弱点があります。
その文化に住む人にとっては、これらの弱点から生じる問題については「誰かがなんとかしてくれるよ」「まあそういうもんだよ。なんとかなるでしょ」というように自らが解決できる問題ではなく、あきらめたり耐えたりするものだと思い込んでいることがあります。

でも複数の言語が話せて、複数の文化の良い点を理解していれば、文化の弱点から生じる問題を解決することができるのです。

誰でも、できれば失敗はしたくないものです。
失敗する可能性を少しでも減らすために、現行の計画に異を唱えて、改善案を提案するといいでしょう。

英語圏の文化に触れてきたのなら、周りの人がそうする姿を何度も目にしているはずです。
自分も何度もそうしてきたはずです。

誰かがなんとかしてくれるのを待つのではなく、自分が何とかするのです。

感情に任せて会議室を出て行ってしまうような人は、本当は味方がほしいんです。
その場に味方がいなかったから、耐えがたくなって出て行ってしまうのです。

その人が感情的になってしまったのには必ず理由があります。
行間を読んだり、相手の気持ちを察したりすることに長けた日本文化で育ってきたのなら、その理由を読み取ってあげることができるはずです。
そして英語が話せるのならば、対立する人たちの気持ちを橋渡ししてあげることができるはずです。
なんとかなるのを待つのではなく、自分がなんとかするのです。

あなたがもし外国語と日本語が話せるとしたら、誰もがあきらめるような問題の解決の糸口を握っているはずです。
単純な例を挙げると、日本国内での人員確保に困っている際に「国内に人材がいないのなら国外から採用すればいいじゃないか」という発想を持つことです。
なぜこのような発想が持てるかと言うと、外国語を話せるようになるまでの過程で、日本人も外国人も根本はそんなに変わらないな、ということがわかっているはずだからです。

単純なことに思えるかもしれませんが、実際に外国人と腹を割って話したことがなければ、確信を持つことはできません。
確信がなければ、自分がこれまで身を置いていた安全地帯を飛び出すことはできません。

自分のコミュニケーションの仕方の振り幅を増大してきた人は、異文化に勇気を持って飛び込んで、外国語などの異文化を自分のモノにするために、時には自分の性格を変えるなど並々ならぬ努力をしてきたに違いありません。
そのような人は、確実に、強い人間です。

苦労をして外国語を話せるようになった先の世界は、あらゆることを自分の流儀で、自分でなんとかすることができてしまう、そんな世界です。

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