1. 「改善」を外国人に教える

改善とは仕事という目的に対して、それを達成する手段をより正確、より速く、またはより効率的なものに変えていくこと。つまり継続的に無駄を排除していくことでより重要な仕事に専念できるようにすることであると言われています。

また、トップダウンではなく現場の人たち中心となって取り組むのも改善という活動の特徴です。

このように改善という言葉は様々な意味が含まれる非常に便利な言葉ですが、残念ながらこれら全てのニュアンスを含む表現は英語にはありません。よって、以下のように分解して説明する必要があります。

  • 仕事 = task/work
  • 手段 = means
  • より正確にする = improve accuracy
  • より速くする = improve speed
  • より効率的にする = streamline
  • 変える = change
  • 継続的 = constantly ongoing
  • 無駄(余分) = redundancy
  • 排除する = eliminate / get rid of
  • より重要な仕事 = more important work
  • 専念する = concentrate (efforts) on
  • 現場の人たちが中心となる = employees in the field play a central role

日本で使われる改善の意味を100%理解してもらうためには、一言で説明しきれません。上記の表現を全て使って改善の意味を伝える例を聴いてみましょう。


In Japanese business practices, there is an activity called “kaizen,” which is also considered a work philosophy. It’s a constantly ongoing process of changing the means for accomplishing a task in order to streamline, improve accuracy or improve speed of the work. In other words, it’s an activity to eliminate redundancy and make our lives easier so that we can concentrate our efforts on more important work. Employees in the field play a central role in it.

日本の仕事の場では「改善」という哲学とも言える活動をします。より効率的に、より正確に、またはより速く仕事をするために手段を継続的に変えていくことを指します。言い換えると、無駄を排除し自分たちの仕事を楽にしていくことでより重要な仕事に専念できるようにすることです。この活動は現場の人たちが中心となって行っていきます。


外国人社員に「改善」を理解してもらいたい場合などにこのように説明することで、以後kaizenと伝えれば相手は「あのことか」と思いだしてくれるでしょう。

もちろん、人間は忘れてしまう生き物ですから、外国人社員が(日本人社員も!)記憶を保持できるように定期的に改善に取り組むワークショップなどがあるといいですね。

2. 「改善」を資料・書面で使う

プレゼンをする時などにパワーポイントスライドにどうしても「改善」という言葉を使いたいとします。よく翻訳で使われる表現はcontinuous improvement です。

2-1. 「改善」を資料・書面で使った悪い例

しかし下図のスライドのように「なんとなく伝わればいいや」と思ってcontinuous improvement とだけ書いてしまうと、「具体性がない」と思われてしまうリスクが生まれます。

slide1-1280x721.jpeg


話を短くまとめなければならない時など、どうしても改善をcontinuous improvement と訳すことになってしまいますが、長期に渡って一緒に仕事をする相手が読む社内文書くらいはkaizen が何たるかを伝える媒体にしても良いのではないでしょうか。

2-2. 「改善」を資料・書面で使った良い例

こちらが伝えたいニュアンスに相当する表現が英語に無いからと言ってどうしても伝えたいことを簡略化してしまうのはコミュニケーションを上手くしようとしているのではなく、コミュニケーションを諦めているのと同じです。

下図のスライドのように、思い切ってkaizen という単語を使った上で、注釈で意味を書き記すのもひとつの手です。

slide2-1-1280x721.jpeg


注釈を入れたい文の最後にはアステリスク(*)を付けます。注釈で使われているのはこちらの文です。


*Kaizen is a constantly ongoing process of changing the means for accomplishing a task in order to streamline, improve accuracy and/or speed, thereby

eliminating redundancy and allowing labor to concentrate on more important work.

改善とはより効率的に、より正確に、またはより速く仕事をするために仕事の手段を継続的に変えていくことであり、無駄を排除しより重要な仕事に専念できるようにすること。


異文化とのコミュニケーションにおいて自身の文化を正確に伝えることは相手の文化を理解し受容することと同じくらい大事です。これから一緒に仕事をする相手との相互理解を得るには「改善」など相手の文化に無い考え方をきちんと説明する必要があります。

「異文化と意思疎通するにはここまでやらなければならないんだ」という意識を持っているかどうかで異文化コミュニケーション能力は大きく変わってきます。ただ英語ができればいい、という単純な課題ではありませんね。

3. 改善活動中の会話で使うフレーズ

それでは最後に、現場で改善活動をしている際に使える英語フレーズをご紹介します。

ご自分が実際に直面する場面で使えそう・使いたいと思うフレーズがあったら、スラスラ言えるようになるまで何度でも声に出して反復してください。そうすればいざと言う時に無意識に英語が出てくるはずです。


Do you feel there is anything we can do to streamline our daily tasks?

日頃の業務に効率化する余地はあると思いますか?


2. We may be able to improve accuracy by using some different parts.

違うパーツを使用することによって正確性を上げられるかもしれません。


3. We should be able to improve speed a little by getting rid of some processes.

いくつかの工程を撤廃することによりもう少し速くできるはずです。


4. This process may be a bit redundant.

この工程は少し余分な気がします。


5. Why don’t we train the line 2 workers so that they’ll be able to handle this job?

第2製造ラインのみなさんに研修を受けてもらってこの仕事ができるようになってもらうのはいかがでしょう?


6. I figured out a way to speed things up a little.

スピードを上げる方法を思いつきました。


7. I was thinking we should eliminate the bleaching process at this stage. Don’t you think it’s a little redundant?

この段階での漂白工程は無しでもいいのではないかと思っていました。ちょっと無駄だと思いませんか?


8. Denny might have an idea of how to reduce the processing time. Let’s go ask him.

デニーさんなら作用時間を短縮するアイディアがあるかもしれません。声をかけに行きましょうよ。


9. If my team can get trained on the partition process, we can help to reduce your work.

うちのチームが分離工程の訓練を受ければそちらの仕事を減らせます。


10. We reduced the processing time by 23 seconds per unit.

1個あたりの処理時間を23秒減らしました。


11. We managed to cut operational costs by 90,000 yen per month.

月90,000円の運用費用を削ることができました。


12. Thanks to Dario, we were able to increase productivity by 5%.

ダリオさんのおかげで生産性を5%上げることができました。

4. まとめ

いかがでしたか?今回は製造業の現場を想定したコミュニケーション方法をご紹介しましたが、実際に上手く立ち回るイメージはできましたか?

もちろん、改善は何も製造業に限られた活動ではありません。ご自分の分野でどのように異文化の人たちと仕事をしていくのか考えていく中で、この記事が少しでもお役に立てたとしたら嬉しいです。

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