埼玉大学の有志教員によって実施されている「学際領域研究プログラム」。文系理系両分野に属する学生の自主的な英語学習を促す環境づくりを模索するこのプログラムの中で、ベルリッツ・ジャパンの講師派遣が活用されています。その目的は、英語でコミュニケーションできる力を伸ばすことにありました。
インタビュー
グローバル人材育成事業をはじめ、かねてから国際的に活躍できる人材の育成に注力している埼玉大学。全学的なプログラムはもとより、有志の教員による草の根的な英語教育も盛んに行われています。その一つ、「学際領域研究プログラム」で活用されているのが、ベルリッツ・ジャパンの講師派遣です。同プログラムを実施している人文社会学研究科・教養学部准教授の長沢 誠先生に、プログラムの内容や講師派遣に至った理由を伺いました。
長沢准教授
本当の意味で“留学できる”大学をめざすには
実践的な英語力の育成が不可欠だった
―学際領域研究プログラムは、先生が他の教員とともに立ち上げた有志のプログラムと伺っています。どういったプログラムで、なぜ立ち上げられたのか、お聞かせください。
長沢氏:本学はかねてより国際的に活躍できる人材の育成に力を入れており、2014年には「経済社会の発展を牽引するグローバル人材育成支援」にも採択されました。当然ながら、学生の留学支援も本学が注力している分野であり、先に挙げた事業の影響もあって派遣留学協定校は順調に増えていきました。にもかかわらず、実際にそれまで開拓してきた交換留学枠を使い切るほど留学する学生は増えていませんでした。特に高い語学要件を求める派遣先に対して、留学“できる”レベルにまで、学生の英語力を伸ばせていなかったからです。
特に深刻だったのが、実践的なコミュニケーション能力の不足です。単純にIELTS™等のスコアが留学協定校の基準を満たせない学生も多かったのですが、それ以上に「現地でうまく学生と話せるか不安」「ディスカッションについていけるとは思わない」と、英語でコミュニケーションできる自信がないために最初から留学をあきらめてしまう学生がめだちました。また理系の学生を研究留学させた際、実験室での危機管理プロトコルを理解できず、活動が制限された例もあります。本学は国立大学であり、たいていどの学生も大学入学共通テストをクリアして入学します。ですから教科書的な英語力は一定以上あるのですが、だからといって英語でネイティブスピーカーとコミュニケーションできるほどの能力が身についているわけではなく、かつ既存の学内の教育では伸ばしきれていない部分がありました。
どれだけ魅力的な留学先があっても、学生が留学できない、しないなら意味がありません。そこで同じ問題意識を抱える教員と協力し、2018年にこの学際領域研究プログラムを立ち上げ、文系理系双方の学生の自主的な英語運用能力開発を促す環境づくりを模索し始めました。
―学際領域研究プログラムの内容について、ご教示いただけますか。
長沢氏:学生の英語4技能、特に会話で軸となるSpeakingやListeningのスキル、そして自律・継続して英語学習に臨む姿勢を育むことを重視した、3ヶ月間の課外活動です。
本プログラムでは、はじめに英語力が社会でどう役立つのか、教員の経験をもって説明します。ここでは、英語学習におけるWHY(なぜ英語を学ぶのか)、HOW(それをどのように達成するのか)、そしてWHAT(そのためには具体的に何をするのか)の順で学生に意識させます。そのうえで、学生に「英語を使って何をしたいのか、何ができるようになりたいのか」アンケートを取ります。以降はアンケートの内容と、事前に受検するベネッセi-キャリアのアセスメント「GTEC」Academicのスコアを参考にしながら、学生一人ひとりに合った学習法・学習内容をレクチャーします。伝える学習法はさまざまで、テキストを使った学習を勧めることもあれば、TEDやYouTubeなどの動画コンテンツを紹介することもあります。
課外プログラムだからこそ
積極的にアウトソーシングすべき
埼玉大学様向けにカスタマイズされた教材
―ベルリッツ・ジャパンの講師派遣は、学際領域研究プログラムにおいてどのように位置づけられているのでしょうか。
長沢氏:本プログラムは有志の教員がボランティアで取り組んでいる課外活動です。ですので授業のように英語を直接教えることはせず、個々の学生の目的や能力に応じた学習法・学習内容を教える、といった形を取っています。
一方で、もともとの我々の目標であるCEFR C1レベルを目指して「学生の留学を後押しする」という点から考えると、プログラムには実践的なコミュニケーションを行う機会が欠かせませんでした。例えば英語を話さずにSpeakingのスキルは伸びませんし、英語を聴かずにListeningのスキルは伸びません。特に留学となると、スラングが交じるような自然な英語を聴いて受け答えする力が求められます。学習内容や学習方法を指導して、あとは学生の独力に任せるというスタンスだと、どうしてもカバーしきれない部分が否めないのです。しかし有志の教員が取り組んでいる以上、割ける時間には限界がありました。そこで、ベルリッツ・ジャパンへのアウトソーシングを考えました。
ベルリッツ・ジャパンはすでに一定以上の社会的認知・評価を受けている英会話スクール。講師は優れた教授法を身につけたプロフェッショナルのはずです。また私自身、日本人が日本人に英語を教えることと英語ネイティブが日本人に英語を教えることは、異なる機能・目的・フェーズがあると感じています。先に述べた自然な英語に慣れさせるという本プログラムの目的からも、外国人講師が派遣されることは強い魅力に映りました。
―ベルリッツ・ジャパンの講師派遣は、大学様の状況やご要望に応じて、カスタマイズしたプログラムを提案・提供いたします。貴学の場合、どういったプログラムだったでしょうか。
長沢氏:SpeakingとListeningに焦点をあてた、少人数でのディスカッションを展開してもらいました。留学では英語で話された内容を正しく聞き取り、自分の意見を英語で相手に伝えるスキルが求められます。そういった意味で、ディスカッションは練習の場として最適だと考えました。参加した学生からの反応はよく、「ネイティブスピーカーならこう表現すると、細かく指導してくれた」と喜んでいました。外国人講師による指導であることや、少人数制での指導であったことが功を奏したようです。
―「GTEC」Academicについては、プログラムの実施前と実施後の計2回学生に受検させていると伺っています。
長沢氏:学際領域研究プログラムは受講にあたっての条件がなく、モチベーションさえあるなら、どんなスキルの学生でも受け入れています。逆に言えば、学生の間でスキルにばらつきがあるということです。教員が学生に対して個別に学習内容や学習方法をレクチャーするうえでも、ベルリッツ・ジャパンの講師に指導してもらううえでも、英語力を測る客観的な指標が必要だと考えて試験的に導入しました。
「GTEC」Academicの結果帳票は、単にスコアだけ表示するのではなく、学生にとって分かりやすく「海外勤務ができるレベル」といった英語力を例示してくれたり、事後学習のポイントを示してくれたりします。またスコアも技能別に示されるので、学習上の目標にしやすいようです。いずれにしても、他の類似のツールと比較して、短期間で「学生の自律した英語学習を支援する」という本プログラムの目標にマッチしたアセスメントだと感じています。
意欲のある学生の力をさらに伸ばすために
実践的な英語を学べるプログラムを続けたい
長沢氏:埼玉大学に入学する学生は、国立大学の入試を突破していますから、知識としてある程度の英語力が身についていることは間違いありません。といっても、実際の学生の実践的な英語力はばらつきがありますし、ほとんどの場合、留学“できる”英語力には至っていないのが現実です。だからこそ、明確な目的を持つ課外の英語力強化プログラムにおいては、実践的な英語、コミュニケーション手段としての英語を学ばせることが重要だと感じています。
高度な留学経験を求める際、したいかどうかと、できるかどうかは別の問題となります。心の底では「留学がしたい」と思っている学生を、海外へと実際に飛び立たせられるよう、今後もプログラムを継続できたらと考えています。
※掲載の情報はインタビュー当時のものです。
本インタビューでは【指導】の観点から大学向け授業講座の活用例を中心にご紹介しましたが、【評価】の観点からベネッセi-キャリア社「GTEC」Academicについて、活用例を知りたい場合はこちらからご覧ください。
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※累積導入社数 2020年末の実績